もうあっという間に2月ですね…早い…

今回は数々の海外大会にジャッジとして出られている大賀先生に海外大会についてのブログを寄贈していただきました!

是非お読みください!

 

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Doxbridge Worlds 2022

 

 こんにちは。自己紹介に若干困りますが、大賀哲といいます。ディベートは3年ちょっとしています。年末年始から1月にかけて、Doxbridge WorldsとUhuru Worldsという大会にIAとして参加しました。前者はブレイク落ちで、後者はブレイクできたのですが、どちらもとても学びの多い大会で、良い機会なので自分自身の整理も含めて言語化してみようかと思いました。というわけでまず、Doxbridge編です。

 

1.Doxbridgeに出ようと思った理由

2.Doxbridgeに出る前にしたこと

3.Doxbridgeの4日間(ラウンド)

4.小括



1.Doxbridgeに出ようと思った理由

 10月とか11月とかだと思いますけど、社会人でディベート練習してるメンバーで、河野先生(聖光)とか綾部先生(東海大)とかがWorldsの話をしていて、前から興味はあったのですがWorldsジャッジ行きたいなと思うようになりました。しかし、いきなり行っても絶対場の雰囲気に呑まれそうだなと思い、海外大会で何度かジャッジしといたほうが良いだろうなと漠然と考えてました。そしたらちょうど、DoxbridgeがFBで流れていて、良い機会だったのでIA応募しました。

 ちなみにDoxbridgeというのはDurham+Oxford+Cambridgeということみたいです。

 参考までにこれまでのジャッジ歴ですが、かなり浅い・・・というかほぼ無きに等しいです。Japan BP 2019が大会ジャッジ・デビューで、当然のようにブレイク落ち。その後、JUDC 2020(Asian)、KK 2021(BP)はブレイクしましたが、本当にそれくらいです。その他覚えてる範囲でRyoso 2020(BP)、Taiwan debate Open 2020(Asian)はブレイク落ちでした。

 

2.Doxbridgeに出る前にしたこと

 大会でジャッジすること自体、KK 2021以来なので10ヶ月ぶり、海外大会ということでいうとTaiwan debate Open 2020以来なので1年半ぶりでした。というわけで、本来であればめっちゃ対策すべきですが・・・師走の12月ということもあり、ほとんど何もできませんでした。

 クリスマス前の練習でジャッジをしましたが、本当にそれくらい。クリスマスのあと(所謂冬休みに入ってからは)流石にやばいだろうと思って、以下の資料と動画を見ました。

 

資料

Hikari Tamuraさん資料

https://drive.google.com/file/d/11mvRphGr2t4dGt_QEcoDAjcZMhZzHsZA/view

REACH FOR THE STARS小澤俊哉さん

http://keiodebate.org/blog/judge-toshiya/

ディベート自由帳

http://debatejiyucho.blogspot.com/2017/12/blog-post.html

http://debatejiyucho.blogspot.com/2018/10/ak.html

http://debatejiyucho.blogspot.com/2018/01/blog-post_2.html

 

動画

ジャッジレクチャー(By とりちゃんさん)

https://youtu.be/67a05pmJE4A

ジャッジレクチャー(By もるもるさん)

https://www.youtube.com/watch?v=ksE0myaKZuk

Chairing Your First Round: A Guide to Oral Adjudication (Hart House)

https://youtu.be/trN0Uu2LvT8?list=PLc4crYfPYpHwlhC4AielmpMhZjvjrkTaV

Improving as a BP Adjudicator - Nicolas Lozano

https://youtu.be/qrGVLCzpVbE

How to chair the adjudication of a British Parliamentary debate

https://youtu.be/rinbzKy4Tgk

 

と、たくさん並べましたが、ほとんどは移動中に読んだり聴いたり、家事の合間のBGMにという感じだったので、どこまで頭に入っているのか(つまり、実際のラウンドで実践できるレベルで自分の中で具現化できていたのか)は怪しいです。

 とりあえず、Tamuraさん資料ととりちゃんさんレクチャーは数回読みました/聴きました。かなり充実した内容で、ここに書いてあること/言ってることをきちんと理解して、実践できるようになるだけでも、かなり良くなるんじゃないかと思います。

 あと、海外大会のRFDは日本でおなじみの順位比較方式(1位から4位まで順に説明する、またはその逆)ではなく、時系列でOGからCOまで見ていって全部で6箇所チーム比較するという方式で、だいたいOA(Oral Adjudication)もこの形式です。本来なら、この時系列形式でOAの練習をすべきですが、結局練習はできず・・・(チェアをすることはないだろうと思っていたので)時系列順で話す心の準備(笑)だけをしました。

 

3.Doxbridgeの4日間(ラウンド)

 さて当日!結論から言うと、ブレイクはできなかったものの、Worldsオープンブレイク(の人)のパネルに入ったり、EUDCベストスピーカーのパネルに入ったり、この大会に出なかったら、得られなかったであろう機会がたくさんあり、とても有意義な経験でした。

 Doxbridgeは1日2ラウンド進行で、予選4日間だったので、わりとゆったりしていました。時差があるので日本時間にすると以下のような感じです。

 

20時半~22時半 ラウンド

22時半~23時 休憩

23時~1時 ラウンド

 

20時半までに子どもにご飯をあげて、お風呂に入れる。寝かしつけは妻にしてもらうというスケジュールで、私は最初のラウンドが終ったら、近所のコンビニに行って妻に差し入れ(お詫び!)スイーツを買いに行くという休憩時間の使い方で、そのあと、2回目のラウンドに臨むというのが×4日。

 

 前置き長くなりましたが、本題に入ります。

 予選8ラウンドですべてパネルでした。以下の表記は、ラウンド:大賀の役割。( )内はチェアとパネルを足したジャッジの数、2行目からモーションです。

 

R1:パネル(3) 

Info: With a four-day working week, the majority of workers work for four days of the week and decrease the total number of hours that they are working. For instance, Iceland implemented a trial of a four-day working week which decreased working hours from 40 hours to 35-36 a week. Similarly, Spain is also piloting such a measure.    

THBT significant steps should be taken to transition to a four day working week

 

1ラウンド目はまあこんな感じかな、というレベルのモーションで、ディベートもわかりやすかったです。1位がクリアで234がクロースなラウンドでした。ランキングはチェアと一緒だったので、結構余裕を持って(あまり焦らず)ディスカッションに参加できました。イニシャルこんな感じでした。

 

チェア:CO>OO>OG>CG

私:  CO>OO>OG>CG

パネル:CO>CG>OG>OO

 

R2: パネル(3)0点ラウンド

THBT it is in South Korea's interests to refuse to engage in a boycott of the 2022 Beijing Olympics.

 

1位がややクリア、23クロース、4がクリアというランキングでしたが(私はそう思ってましたが…)、1位2位がチェアと逆でした。4位のみ同じで、あとは少しずつずれているというよくありがちなイニシャルで、ディスカッションはそこそこ時間かかりましたが、最後はチェアが手際よくまとめていました。

 

チェア: OO>CG>OG>CO

私:  CG>OO>OG>CO

パネル:CG>OG>OO>CO

 

あと、この後結構この問題が重要(深刻)になってくるんですが、大きな傾向としては、ヨーロッパのジャッジはPrinciple重視、アジアを中心に(欧米圏以外の)ESL, EFLのジャッジはPractical重視の傾向があり、かつ(このPrinciple / Practical問題とも関連してますが)ヨーロッパのジャッジはClosingに厳しい(vertical extension、とくにPractical系のverticalをあまり評価しない)傾向があるように思います(もちろん、ジャッジにもよりますし、ラウンド内でのディベーターの議論の完成度にも拠りますが、大きな傾向として)。自分のなかで解決策はまだ確立してませんが、とくにクロースなラウンドでこの問題がでてくることが多いように思います。ちなみに、このラウンドでもOOがだしてきたDemocratic valueというPrincipleをどのくらい評価すべきかでジャッジ評価が分かれていました。

 

この大会の後に知りましたが、ジャッジとしてエクステンションをどう評価するのかについては、以下のブログが有用だと思います(もちろん、ディベーター目線で読んでもとても役に立つと思います)

Extension Deficit Hyperactivity Disorder

https://ehpriori.com/home/2017/9/21/extension-deficit-hyperactivity-disorder

 

R3: パネル(2)1点ラウンド

THBT states should not use private military contractors in combat.

 

このあたりからジャッジ・ディスカッションにも慣れてきました。1位がチェアと一緒。私の2位3位がチェアの3位4位。チェアの2位が私の4位。かなりディスカッションが白熱しました。楽しかったです(笑)。

 

チェア:CG>OG>CO>OO

私:  CG>CO>OO>OG

 

ちなみにこのチェアは、(ディスカッションのときは普通の人だと思いましたし、普通に話してましたが・・・)ブラジルのチャンピオン的位置づけの人で、この大会でもブレイクしてGFジャッジになってました(吃驚)。

 

R4:パネル(3)。6点ラウンド。

Info: Devolution is the transfer of power from a central government to subnational (e.g., state, regional, or local) authorities. The devolved territories have the power to make legislation relevant to the area and thus granting them a higher level of autonomy; this includes areas such as healthcare, law enforcement, education, etc.

In multiethnic states, THP the use of devolved governments as opposed to centralized governments

 

この大会ではずっとパネルだったんですが、最初の正念場がこのR4。チェアがAC(あとで知ったんですが、このACさんはKorea WorldsオープンブレイクのYe Joo Hanさん(Harvard)でした)、パネルはドイツ系の方だったんでが、ヨーロッパのいろんな大会で優勝してる方みたいで、自分だけ明らかに場違いな感じでした。ディスカッション的にはかなり学びの多いラウンドでした。

 

チェア:CG>OO>CO>OG

パネル:CO>OO>CG>OG

私:  CO>CG>OO>OG

 

で、ディスカッションの末、下記になりました。

CG>CO>OO>OG

 

CO>CGという点では私とパネルが一緒、CO>OOという点でも私とパネルは一緒。CG>OOという点では私とチェアが一緒というイニシャルで、CG・COのコンパリとOO・COのコンパリをかなり重点的に話しました。中身もそうですが、パネルからチェアを説得するときの方法、クロースなんだけれども相対的に相手のほうに分があって、そういうときにうまく妥協点を探る方法みたいなものがとても勉強になりました。チェアは流石にまとめるのが上手く、イニシャルそこそこずれてるときのまとめ方など得られるものが多かったです。あ、あと、アッパーラウンドということもありますが、CG(たぶんインド人)の人たちが信じられないくらいのファスト・スピーチでかなり困りました・・・。

 

R5: パネル(2)。4点ラウンド。

THW allow corporations to offer monetary remuneration and cover any penalties for breach of contract in exchange for whistleblowers disclosing information about illegal activities committed by other corporations

 

チェア:CO>OG>OO>CG

私:  CO>CG>OG>OO

 

1位が同じ。私の2位がチェアの4位。私の3位4位がチェアの2位3位。そんなに壊滅的にズレてるわけではなかったのですが、CGの扱いをめぐってかなり認識の齟齬があって・・・。OGが基本的にpracticalの話、CGがprincipleっぽい話をしてたんですが、私がCGのprincipleを大きくとっていて、チェアがほとんどそれを評価していなくて、そこで割れてました。

 

R6:パネル(3)。9点ラウンド

R6

Info: In a common law system, case law (published judicial opinions) is of primary importance and the courts are generally adversarial - this means the court acts as a referee between parties (e.g. the prosecution/plaintiff and the defendant) and there is generally a more prominent role for lawyers over judges. In a civil law system, codified statute (legislation) is of primary importance and the courts are generally inquisitorial - this means that the court plays a more investigatory role in cases and there is generally a more prominent role for judges over lawyers.

THBT new democracies should adopt a common law system over a civil law system

 

おそらくこの大会で一番きつかったのがこのラウンドです。チェアはEUDCベストスピーカー(後にこの大会のGFチェアになりました・・・)。パネルはよくわかりませんでしたが、喋り方からしてかなりこなれてる感じがしました・・・。

 

チェア:OO>OG>CO>CG

パネル:OO>CO>OG>CG

私:  OO>CG>OG>CO

 

モーションが判例法vs大陸法ということで法学部脳がひとりで盛り上がっていました。アベレージ2位相当のラウンドで、レベルはかなり高かったです。だからかもしれませんが、論点がかなりたくさん出て情報量の多いラウンドでした。もしやこの人たち(英語圏の人たち)にとってこのモーションは古典なのでは?と思うほどでした。

 

OG>COがかなりクロースで難しかったのと、私はGovベンをCG>OGにしてたんですが、チェアとパネルはメカニズムをちょっと足してるだけで、OGに対して優位性を説明できてないという評価でした。オープニング、クロージングの取り方にかなり齟齬があり(ラウンドの情報量に私が追いついてない問題もあるのですが)、あまりディスカッションに貢献できなかったと思ったラウンドでした。

 

R7:パネル(2)。5-6点ラウンド(サイレント)

Pushback culture actively promotes "constant vigilance and outrage" in response to perceived microaggressions and divergences from approved opinion

THS the rise of '"pushback culture"

 

モーション的にはちょっと苦手な感じでしたが、下位ラウンドだったこともあって、Justification自体はそんなに難しくはなかったです。ランキングはチェアと完全一致。理由もほぼ一緒でした。

OG>OO>CG>CO

 

R8:パネル(2)。8-9点+αラウンド(サイレント)

In countries with high rates of organised crime, THP attempts by governments to come to peaceful truce deals with organised crime bosses, rather than aiming for full capture and adequate punishment

 

さて、最終ラウンド。チェアはNarayan Sharmaさん(インド人です)。この方とはこの後もそこそこ接点が。彼はABPオープンブレイク、Japan BPベストAdjudicator、UhuruワールズDCAという素晴らしいディベーターで、この後のUhuruワールズでもご一緒します。このラウンドも含めて2回一緒にジャッジすることになるのですが、どちらも壊滅的にランキングが分かれてしまいました・・・(笑)。ですので、ジャッジ的には結構苦手なタイプです(理由は後述します)

 

R7・8がサイレントなんでわかりませんが、オープンバブルっぽい部屋で、クロージングにハーバードとオックスフォードがいました。というわけで皆殺気立ってました(怖)

 

チェア:CG>OG>CO>OO

私:  OO>CG>OG>CO

 

OOの位置で揉めて1位と4位が逆。OO以外のCG>OG>COは一緒でした。OG・CGがギャングと交渉できる、地域の治安が良くなるというpracticalな話をしていて、それに対してOOはギャングや犯罪組織に正当性を与えることになるというprincipleの話をしてました。私はOOの話を大きくとっていて、チェアはほとんどとっていなかったため、OOの評価で割れてしまいました。このPrinciple / Practical問題は、至る所ででてくる(この大会でも3回くらいあった)のですが、結局自分のなかで解決策が見つけられないまま予選は終りました。

 

4.小括

 ずっとパネルだったので、あまり期待はしてませんでしたが、案の定ブレイク落ちでした。この時点での反省を振り返ると以下のようになるかと思います。

 ジャッジ(パネル)に求められる能力が、最低限次の①~④だと思いますが(①要点をまとめる、②争点を見つける、③スピーチの評価をする、④①〜③を端的に表現する)、

 

  1. average2位以上のラウンドorバブル等の時に、②と③が結構怪しくなることが多かったように思うので、ラウンドの情報量について行けてないのかなと思いました。感覚的には、たぶん①はできているものの、①から②③に瞬時に移行できない(あるいは①をしながら②③をすることができてない)という感じがあって、多少慣れの問題なのかもしれません。 
  2. 自分のjustificationを言うことはできるが、その後のディスカッション(チェア/パネルがイニシャルを言った後の議論)であまりバリューを出せてない、それぞれのjustificationを比較する・議論するという段階で、あまり説得的な議論ができていないと感じました。
  3. あとは傾向として、自分はPrincipleを比較的強くとる、クロージングを強くとる傾向があるので、ジャッジとしての自分の傾向を相対化してみると良いのかなと思いました(これまであまり意識してなかったですが・・・)。

 

以上の点は、今後の課題だろうなと大会終った後に思いました・・・というだけで、解決策は見つかってません。あと、適当にぐぐってたら以下のページに行き着いて、驚くほどのわかりやすさだったので、(これから)読んでみようと思いました。

 

How to be a good and useful wing judge (Nick Zervoudis & Enting Lee)

https://zervoudis.com/post/winging-guide-2020/

 

ブレイクはできませんでしたが、久しぶりの海外大会で、かなり得るものも多く、良い経験ができました!